■ 6月
尾崎圭司、極真空手全日本ウェイト制大会・中量級に出場!
        1回戦、右後ろ横蹴りで一本勝ち。
        2回戦、シ−ド選手(3位入賞者)に延長戦判定で惜敗

激励会

応援団の写真

試合写真


平成14年6月8日(土)〜9日(日)、第19回全日本ウエイト制空手道選手権大会(極真会館松井派主催、大阪府立体育館)に神奈川大学体育会テコンド−部の後輩・尾崎圭司(現湘南平塚支部長)が挑戦することになった。

日本テコンド−協会は有志を集い、極真空手に挑戦する尾崎圭司を激励すべく新装したばかりの「横浜赤レンガ倉庫」で「励ます会」を行った。会は盛り上がり、参加者全員が尾崎の勇気を讃えた。

自分は、神奈川大学テコンド−部同期の寺戸謙太郎、渡部実とともに車で大阪へ向かった。現地には、神奈川大学テコンド−部OBの大黒さん、前田さんの両先輩が応援にかけつけ、尾崎を激励した。

河宗師範の命により、主将の長田康助とともにセコンドに付くことになったが、自分の感想は「凄かった!」、この一言である。何が凄かったのか?始まりから終わりまで全てが凄いと思った。まずは、試合当日の朝、大阪府立体育館の前は開場を待つ選手やセコンド、その仲間達であふれていた。その時、思ったことは、誰が選手で、誰がセコンドなのか、わからないくらい皆身体が大きくてがっしりとしているということだった。

選手受付が始まり、尾崎と共に計量室に入ると、さらに驚くべき光景を目にした。尾崎は極真空手東京城南川崎支部への出稽古経験があるので、どう感じたかはわからないが、自分は、正直「尾崎ちょっとやばいかな?」と思った。普段、尾崎の鍛え抜いた身体をみて「凄い」と思っていたが、その尾崎が小さく見えたのだ。出場選手は、大胸筋、広背筋、腹筋、大腿部などが鍛えられており、「自分達はレベルが違うのではないか」と感じた。長田も同意見だった。

しかし、普段の練習で尾崎の蹴りを受けている自分は、「いくら極真の選手が凄い肉体をしていても、尾崎の蹴りをまともに受けたら倒れないはずがない」という確信があった。そのように自分に言い聞かせながら、尾崎のアップを手伝った。尾崎の落ち着いており、調子は良さそうだった。なにかしてくれそうな予感がした。

尾崎の試合は、初日第1試合だったが、開始が予定より30分近く遅れた。尾崎も緊張していたと思うが、セコンドの自分も緊張していた。不安と期待でいっぱいだった。1回戦の対戦相手の極真選手は、170cm程度で背は高くなかったが、体重が80kgもあり、筋肉の塊みたいな選手であったので、自分を不安にさせた。尾崎は新しいJTA黒帯道衣を着ていたので注目されていたようだ。

いよいよ試合が開始された。自分はセコンドではあるが、対極真空手戦の技術はわからないし、尾崎が一番理解していると思ったので、余計なことは言わず、「ガードをさげるな」「頑張れ」と、言葉をかけて送り出した。

試合開始。対戦相手は序盤様子を見ており、前に突進してこなっかたので尾崎は結構やりやすそうだった。河宗師範が指導したとおり、極真選手は横蹴り(ヨッチャギ)に対する防御が甘く、尾崎の蹴りがヒットしていた。中盤になると突進の下突きからロ−キックといった極真得意の攻撃をしかけてきた。テコンド−選手はこの攻撃に弱いと、河宗師範は危惧していたので、それに対する反撃は十分練習したようだ。尾崎も負けじとさがらず撃ち合い、ロ−キックで応酬し、一歩も引かなかった。しかも尾崎は、中段膝蹴りを蹴ったので、相手の極真選手は一瞬動揺したようだ。イメ−ジしていた「ロ−キックにもろく打たれ弱いテコンド−選手では、なかった」、という感じだった。結局、本戦は引き分けになり、休みなしの延長戦が始まった。

延長戦になり、相手は「他流派に負けてなるものか」といった凄い形相で突進してきた。それに対して尾崎は、冷静に対処し、中段への横蹴りや上段へのかかと落とし(ネリョチャギ)などを使い、上手くさばいていた。その時である。相手が下突きで前にきたところ、尾崎は一歩しりぞきカウンタ−の右後ろ横蹴り(トラ・ヨッチャギ)を蹴った。相手は腹を押さえながら膝をついてうずくまった。間をおいて審判全員が笛を鳴らして旗を横に振り、「技あり」を宣言した。極真の指導者であろう主審が驚いた様子だった。相手選手は「他流派に負けてはいけない」という気持ちが顔に出ていた。立ちあがろうとしたが、また膝が落ちた。
その瞬間、河宗師範が「一本!、一本!」叫ばれた。
あたかもその声と同時に、主審によって「一本勝ち」が宣言され、副審4名も皆それに従った。自分は「やったー!」と感激すると同時に、「凄い!」と感じた。大会の第1試合で、あきらかに他流派とわかる目立つ道衣を着ている尾崎に観客も皆注目していたと思う。そんな中での一本勝ちである。「凄い!」としか言いようがない。

2回戦の相手は、シ−ド選手の金森選手(兵庫支部、183cm、78kg、本大会中量級3位入賞)だった。河宗師範は、尾崎に対し「金森選手は、元世界チャンピオンの中村門下であろうから、中村さんが現役の頃、得意としていた膝蹴り、とくに上段には気を付けること。シ−ドということは、期待されてのことだろうから、引き分けの内容では、絶対旗は相手にあがる。誰が見ても勝ちという内容でなければ勝てない。ここは一か八か、顔面に跳び後ろ横蹴りをはなってみてはどうか。この試合を突破すれば、ベスト4もねらえる」と指導・激励された。

金森選手は、尾崎の1回戦の試合を見ていたようで慎重だった。上段へのガ−ドを固め、じわりじわりと間合いをつめてきた。尾崎は、トラヨッチャギ(後ろ横蹴り)やパンデ・トルリョチャギ(後ろ回し蹴り)などをはなつが、1回戦とは異なり、ダメ−ジを与えられなかった。やはり身長差15cmがひびいたようだった。結局、お互い決め手が無く本戦終了。

延長戦も1回戦同様、お互い決め手がなく終わってしまった。自分は、「引き分けかな。どうなるのだろう」と思った。後で聞いてみると尾崎も「引き分けだ」と思ったらしい。その場合、初日ル−ルでは、再延長戦は行わず体重判定となる。ウェイト制なので3kg差が有れば軽い方が勝ちとなるが、そうなれば5kg軽い尾崎の勝ちと言うことになる。しかし、旗は金森選手に上がった。やはり他流派が判定で勝つのは難しかった。

尾崎の極真空手への挑戦は終わってしまったが、まだ始まったばかりである。初出場にしては良い結果だったと思う。今回の尾崎の一本勝ちを見て「凄い!!」という気持ちと共に「自分も!」という気持ちがわいてきた。河宗師範は、試合終了後、「来年は5名くらい軽量級と中量級へ挑戦させたい」とおっしゃっていたので、自分がその中に入れるよう頑張りたい。

最後に、今大会の試合参加費(参加費3万円、健康診断書など2万円、通信費)および遠征費(選手、セコンドなどの大阪までの往復交通費)などの総額約25万円は、すべて神奈川大学体育会テコンド−部0B会の財政支援によるものです。尾崎にかわり厚く御礼申し上げます。

                     千葉船橋支部 井上鉄朗