四天王

仏教的世界の中心にそびえる聖地・須弥山(しゅみせん)の中腹において、
山頂の帝釈天(たいしゃくてん)に仕えながら、東西南北の四方四州を守護する神。
この世にも派遣され、人々の善悪の行いを視察し、帝釈天に報告するという。
四天王は、仏法守護の神である。
また、朝鮮から伝来した仏教を尊んだ聖徳太子が、摂政就任と同時に着手した四天王寺の
建立以来、日本における正法国家鎮護の神でもある。

北方の守護神は、多聞天(たもんてん)。
別名、毘沙門天(びしゃもんてん)。
毘沙門天は、四天王中、最強の神とされたため、武士から武神として信仰されていた。

それゆえ「戦勝神」としても強い信仰を集めていた。
(競技武道で使用している「戦勝者」、「勝者」、「勝利者」は、仏教の概念である。
 本来の意味は、人生を仏法にもとづき強く正しく生き、生と死における不安、苦しみ、
 恐怖等を克服して勝った人を指す。
 由来は、釈迦(しゃか)が悟った際、その教えを人々に伝えるか否かを迷ったが、
 梵天が釈迦に対し「・・・戦勝者よ、・・・法を説きたまえ」と勧めたとされる)

例えば、天皇後醍醐を最後まで支えて、足利幕府の祖・足利尊氏に徹底抗戦した功により、
幕末の志士達が英雄視した武将・楠木正成(くすのき・まさしげ)の幼名は多聞丸であったと伝わっている。
戦国最強軍団と言われ、織田信長も怖れた越後(新潟)の上杉謙信(うえすぎ・けんしん)は、
熱心な毘沙門天信仰者で、正義の戦いを好み、「毘」の字を旗印に戦ったことは有名。

西方の守護神は、広目天(こうもくてん)。
人々に仏心を起こさせながら、悪の処罰をする神と言われている。
特徴は、筆(右手)と巻物(左手)をもっている。鋭い千里眼で、すべての世界の出来事を視察し、
真実を書き留めるためだと言われている。

東方の守護神は、持国天(じこくてん)。
別名、治国天(ちこくてん)。
不動不変の国づくりのための神。
国家安泰から家内安全まで御利益のある神として信仰されている。

南方の守護神は、増長天(ぞうちょうてん)。
五穀豊穣の神として信仰されている。

武士の世界では「徳川四天王」等、武家集団内で優れた四人の傑物を指して使用されてきた。