目 的
日本跆拳道は蹴美を極める蹴武である。
蹴美涵養基本移動蹴り七種は、
蹴美を涵養するために不可欠な蹴り技の基礎を蹴りの移動稽古を通じて涵養する。
初期の構えの手順
① 平行立ち+ 臥龍の構え
② 指導者「蹴りの用意!」、「構えて!」
③ 左・半前屈立ち+ 伏龍の構え。修練生・気合い。
動作の特長
① 日本跆拳道の蹴りの移動稽古は、
運動の土台と言える腰を強化・安定させる半前屈立ちから行うが、
「旧テコンドー」の移動稽古のように後方への方向転換は行わず、
より実戦( 組手・他流試合等) の動きに近い「前進・後進移動稽古」とする。
② 前進蹴りと後進蹴りの際、蹴りの打撃部位もしくは狙うべき急所をかえる。
蹴りの段差攻撃および打撃部位の使い分け技術を涵養する。
③ 後進蹴りの際、「後進かわし防御」を稽古することで、
相手の攻撃に対し条件反射的に身をかわすことを可能とする敏捷性を涵養する。
④ 後進蹴りの際、軸足を斜め後ろに引いて間合いを調整する技を涵養する。
これが突進・前進してくる相手に対するカウンター蹴りのポイントとなる。
⑤ 蹴美の蹴りは、利き足のみに偏ってはいけない。
左右いずれの足でも華麗な蹴り技が蹴れなければならない。
そうすることで攻撃力が増し、相手には心理的プレッシャーをかけることができる。
これを実現すべく前進蹴り時は奥足で蹴り、
後進蹴り時は前足で蹴ること。
⑥ ボクシングの格言で「左を制する者は世界を制する」とある。
我が日本跆拳道もしかり。
「左の蹴りを制する者は世界を制する」といえる。
しかし、右利きが絶対多数であることも関係してか、
多くの人々の利き足が右足であり、
その結果として蹴り技が右足偏重の嫌いがある。
真正な蹴美を極めるためにも、
利き足でない左足の蹴りを鍛えなければならない。
また、多くの人々が、右利き・右利き足のため、
組手スタンスも前・左足+ 後・右足が絶対多数である。
ゆえに多くの場合、相手から最も近いのは左足ということになる。
確かに、蹴りの威力は、左足よりも利き足の右足が高い。
だが、相手から最も近い左足による蹴り技を習得することは、
ボクシングのジャブ同様の効果が期待できることから、
華麗な蹴りによる強さを極める上で左足技の強化は重視されなければならない。
そこで開始時は、左・半前屈立ちとし、
号令は奇数(3か5)とし、後進蹴りの際、より多く前足が左足となるようにする。
より実践的な左足の蹴り技を涵養するためである。
その際、門下生は、接近・突進してくる相手をイメージしながら蹴ること。
ただ漠然と蹴っていても蹴美を極めることはできないからである。
⑦ この反復練習を地道に行うことによりJ T A 門下生の潜在意識の中に、
日本跆拳道の蹴美の基礎を記憶の神経回路を構築し、
実戦時に、無意識で蹴り技が放たれる真正な蹴武技術を涵養する。
注 意
① 少年少女部、熟年層、初心者等の
筋肉痛や怪我等を可能な限り防止すべく順序通り行うこと。
② 各自の柔軟レベルに応じた無理のない蹴りを心がけること。
日本跆拳道は己との闘いである。
ゆえに蹴りの高さ等を他者と比較する必要はない。
己に勝つためには持続性が不可欠。
力まずマイペースで運動しなければならない。
とくに、踵落とし蹴り、後ろ横蹴り、後ろ回し蹴りは注意を要する。
③ 移動稽古中、初心者、熟年層、少年少女部は、上記の趣旨に鑑み
踵落とし蹴りにかえて前蹴りを、
後ろ横蹴りにかえて横蹴りを、
後ろ回し蹴りにかえて回し蹴りを行うことが望ましい。
けっして恥ずかしいことではない。
「できないことは恥ずかしい」と思う心性こそ上達を妨げる最大の障害である。
できないからこそ白帯から入門し、学ぶのであって、
最初から華麗な蹴り技ができるのであれば、
蹴武を極める武道= 日本跆拳道に入門する必要性はないのだから。
まじめに無理なく、マイペースで楽しみながら
自分にあった「マイ・テコンドー」でがんばっていただきたい。
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