第16回全日本フルコンタクト・テコンドー選手権大会の見所 他
    
 
            井上鉄朗、優勝してプロポーズ成るか!

JTAの看板選手である「蹴美の四天王」の井上鉄朗と妹尾将吾が燃えている。

 井上鉄朗は、新しい蹴撃必倒の蹴り技を完成させたという。
あの温厚で寡黙な井上が、「優勝して後楽園ホールのリング上で彼女(S・R)にプロポーズする」
と河明生会長に宣言するほど、今大会にかけるモチベーションが高い。

これを聞いて
「それじゃ、井上のプロポーズは来年以降の大会で。今年は自分がかならず優勝します!」
と河会長に豪語したのが、妹尾将吾である。

 両者は歳も同じであり、同じ時期に入門し、かつ宗師範内弟子時代を過ごしたことから大変親しい。
しかし、試合となれば別で、燃えたぎるライバル心をむきだしにする。
両者はいずれも甲乙つけがたい蹴美の名選手、
とりわけ「テコンドーの華」といえるかかと落とし蹴りの名手として「西の妹尾、東の井上」と評されている。

果たしていずれが日本一の蹴美の名手なのか? 
過去、両者は全日本大会予選会で二度対決し、名勝負を演じてきた。
対戦成績は1勝1敗の五分。
昨年、初めて全日本大会での対決となった。
すなわち第15回全日本フルコンタクトテコンドー選手権大会・準決勝戦という後楽園ホールのリング上で
雌雄を決することになったのだ。
両者の武道家としての理想的な関係を知る大会関係者、とりわけ河会長が最も期待した一戦であったといえよう。

試合は予想通り全身全霊をこめた蹴美の競演であった。
妹尾の華麗な蹴り、井上の華麗な蹴りが、それぞれ観客を魅了した。
両者一歩もひかず一進一退の攻防が続いた。
本戦はもちろん、延長戦でも決着がつかない。

試合最中、一瞬の隙をつく「蹴撃必倒」を狙い両者がにらみ合う状態が続いたが、
やはり完成度の高い選手同士のそれは異常な緊張感をもたらし、オーラを会場に発散した観があった。
あたかもリング上には両雄しか入れない「神聖なる戦士の空間」のようなものができ、
たとえ蹴りの応酬が途絶えたとしても、観客は金縛りにあったかのように釘付けになったのだ。
このような緊張感は、プロの試合でもなかなか体験することはできない。

結局、試合は、二度目の延長戦で、やや攻勢に転じた井上の積極性が審判に評価され、3対0の判定勝ちとなった。
激闘を終え抱き合う両者のさわやかな笑顔が印象的であったが、このテコンドー史上稀に見る激闘の名勝負により、
両者は精も根も尽き果てたようで、いずれも次の試合(決勝戦、3位決定戦)において無傷の若手の軍門に下ることになる。

JTAファンとしては、もう一度見たい対戦であろう。だが、第16回全日本フルコンタクトテコンドー選手権大会で
両者の再戦が実現するためには、いずれも決勝戦まで勝ち残らなければならない。

井上鉄朗の一世一代のプロポーズは実現するのか? 
これも今大会の見所の一つである。