日本テコンド−協会(JTA) 約束組手総論各論        宗師範 河 明生 T、約束組手総論 目  的 1)チルギやチャギ、それに対するマッキなどの各種テコンド−動作を学ぶ。 2)テコンド−動作を合理的に修得するために必要な   @呼吸法を学び、   A集中力を高め、   B胆力を養い   C筋力の緊張・弛緩使用法を訓練する。 3)自由組手を行うための基礎を養う。とくにケガをしないための防御の修得を重視する。 4)不測の事態にそなえた正当な自己防衛のための訓練を行う。   @慌てず冷静に対処するため訓練する、    A人間の各種急所を憶え、そこへ正確な手技・足技を攻撃できるよう訓練する。 動作基本 1)攻撃側と防御側の2名で行う。 2)攻撃側は、あらかじめ定められた部位をめがけた手技や足技によって攻撃する。 3)防御側は、それを定められたマッキで正確に受け、反撃を行う。 要  点 1)相手から視線をそらさない。 2)移動の際、自分の体重を支える正しい姿勢・立ち方で、各種攻撃と各種防御を憶えること。 3)攻撃や防御の瞬間は、使用すべき筋力を緊張させ、それ以外は弛緩状態にすること。 4)上記の動作はすべて腹式呼吸をベ−スにした呼吸法で行い、動作の際、瞬時に息を吐くこと。 5)威力を高まるため攻撃・反撃の際、気合いを入れること。練習・訓練で気合いがでなければ、   試合や正当防衛の実践では、気合いがでることはない。   また気合い(大声)を出して練習することは、ストレスの発散にもなるので、恥ずかしがらず   挑戦し、慣れること。 注意 1)「目的」と「要点」は、すべての約束組手で共通する場合が多いので、確認を怠らないこと。   たとえば、「中級応用約束組手」に進む場合でも「初級基本約束組手」の「目的」と「要点」を   確認すること。 2)約束組手各論の名称は、  「初級基本約束組手」と「中級応用約束組手」は攻撃側を基準として名称を定める。  「上級蹴美約束組手」の名称は、防御側を基準として定める。 U、約束組手各論 1、初級基本約束組手・手技 目  的−チルギやテリギなどの手技基本攻撃と、      それに対するマッキ・手技基本防御と反撃を修得する。 対 象 者−初級レベルの無級(白帯) 動作基本−初級基本約束組手1番〜5番      立ち方は、攻撃側、防御側いずれもコンヌン・ソギ(半前屈立ち)      攻撃側は、あらかじめ定められた手技によって攻撃する。進行方向は2歩前進。       防御側は、それを定められたマッキで正確に受け、反撃を行う。進行方向は2歩後進。 準備動作−攻撃側は、定められた第1動作の手技を右手で攻撃する姿勢を保つ。      防御側は、その手技を定められたマッキにより受ける。     攻撃側は右手右足を引きパカパルモッ・ナジュンデ・マッキ(下段払い)で構える(気合)。     防御側は下げた足を元に戻すと同時に、ヘチョ・マッキ(十字払い)で構える(気合)。 要 点−「約束組手総論(前述)」を参照のこと。      初心者はとくに正しい姿勢・立ち方の歩幅を安定させること。      力まず緊張しない。攻撃や防御の瞬間以外は弛緩状態(リラックス状態)にすること。   動作の際、瞬時に息を吐き、気合いを入れることに慣れること。 2、初級基本約束組手・足技 目  的−チャギ・足技基本攻撃とそれに対するマッキ・手技基本防御と反撃を修得する。 対 象 者−初級レベルの7級(黄帯)、6級(橙帯) 動作基本−初級基本約束組手6番〜10番      立ち方は、攻撃側、防御側いずれもコンヌン・ソギ      攻撃側は、あらかじめ定められた足技によって攻撃する。進行方向は2歩前進。       防御側は、それを定められたマッキで正確に受け、反撃を行う。進行方向は2歩後進。 準備動作−攻撃側が、定められた第1動作のチャギを右足で攻撃する姿勢を保つ。      防御側は、そのチャギを定められたマッキにより受ける。      攻撃側は右手右足を引きパカパルモッ・ナジュンデ・マッキ(下段払い)で構える(気合)。      防御側は下げた足を元に戻すと同時に、ヘチョ・マッキ(十字払い)で構える(気合)。 要  点−「約束組手総論(前述)」と「基本約束組手・手技(前述)」を確認。      初心者は正しい蹴りの姿勢を修得すること。とくに軸足となる片足で全体重を支え、倒れ      ないこと。      防御側が反撃をする際、攻撃側との距離が近すぎて蹴り足の膝が伸びきらない場合、      軸足を若干後進して間合いを調整し、蹴るという軸足後進移動動作を学習する。      逆に、その距離が遠すぎて蹴りが届かない場合、      軸足をスライド前進させて間合いを調整し、蹴るという軸足前進移動動作を学習すること。 3、中級応用約束組手・手技足技複合 目  的 「初級基本約束組手」で学習した手技基本攻撃から、足技基本攻撃への手技と足技を複合した 「段差攻撃」=「打点変化攻撃のコンビネ−ション」を修得する。 上記に対する手技・マッキによる「段差防御」=対打点変化防御のコンビネ−ションと、 軸足重心移動動作の蹴りによる反撃を修得する。 対象者−中級レベルの5級(緑帯)、 動作基本−中級応用約束組手1番〜5番     立ち方は、攻撃側、防御側いずれもコンヌン・ソギ(半前屈立ち)     攻撃側は、あらかじめ定められた手技、次いで足技で攻撃する。進行方向は2歩前進。      防御側は、それを定められた片方の手で連続マッキをし、反撃を行う。進行方向は2歩後進。 準備動作−攻撃側は、定められた第1動作の手技を右手で攻撃する姿勢を保つ。      防御側は、その手技を定められたマッキにより受ける。     攻撃側は右手右足を引きパカパルモッ・ナジュンデ・マッキ(下段払い)で構える(気合)。     防御側は下げた足を元に戻すと同時に、ヘチョ・マッキ(十字払い)で構える(気合)。 要  点 1,攻撃側要点 @手技と足技による正面の攻撃を複合した「正面段差攻撃」を修得する。 「段差攻撃」とは、自由組手や護身などの攻撃パタ−ン、すなわち上段のガ−ドの硬い相手に対し、中 段へ攻撃することでそのガ−ドを中段に集中させて崩し、手薄になった上段へ瞬時に攻撃したり、 逆に中段のガ−ドの硬い相手に対し、上段へ攻撃することでそのガ−ドを上段に集中させて崩し、 手 薄になった中段へ瞬時に攻撃する(たとえば、手技による正面の中段攻撃から足技による正面の下段攻 撃、手技による正面の上段攻撃から足技による正面の中段攻撃、手技による正面の中上段攻撃から足技 による正面の上段攻撃など)という打点変化攻撃のコンビネ−ションをいう。 A「左を制する者は世界を制する」の格言は、テコンド−にも当てはまる。   しかし、左足による中上段や上段への蹴りを不得意とする修練生が多い。   そこで左足による中上段や上段への蹴りの技術を向上させるため訓練する。 2,防御側要点 @「正面段差攻撃」に対する「正面段差防御」を修得する。  「段差防御」とは、上記「段差攻撃」に対し、中段受けから下段受け、中段受けから上段受け、    上段受けから中段受けて防御するという対打点変化防御のコンビネ−ションをいう。 手技+足技の「正面段差攻撃」に対し、片方の手で連続して受ける「連続受け」を修得する。 A「初級基本約束組手」で学習した基本的防御のパンデ・マッキ(逆受け)を修得する。 手技足技複合の「正面段差攻撃」に対し、片方の手で連続して受ける。 Bリスクの後にはチャンス有り。攻撃側の手技足技複合攻撃を受けきった場合、反撃の機会がある、  という思考を中級応用約束組手の実技により身体で憶える。  反撃の際、攻撃側に近い足(ここではすべて右足と定めている)で蹴る方が、相手に当たる確率が  高いので、それを修練する。  その際、奥足の左足に重心を移して軸足とし、片足立ちとなり、相手に近い前足で蹴るという  軸足重心移動動作を修得する。 4、中級応用約束組手・異種足技複合 目  的−「直線系の蹴り」、「回し系の蹴り」、「回転系の蹴り」、「縦下ろし系の蹴り」などの       異種の蹴りを複合した「足技連打段差攻撃」を修得する。       上記、異種の蹴りの複合連続攻撃に対する「かわし防御」という移動防御を修得する。 対 象 者−中級レベルの4級(紫帯)と3級(青帯) 動作基本−中級応用約束組手6番〜10番   攻撃側は、あらかじめ定められた足技・蹴りを右足、左足の順に連続攻撃する。進行方向は前進。   防御側は、それを定められたマッキで受け、手技または足技で反撃を行う。   防御側の立ち方(各種立ち方使用)と、進行方向(前後、左右、斜めに移動防御)は一定しない。 準備動作−攻撃側は、定められた第1動作の足技・蹴りを右足で攻撃する姿勢を保つ。      防御側は、その蹴りを定められたマッキにより受ける。     攻撃側は右手右足を引きパカパルモッ・ナジュンデ・マッキ(下段払い)で構える(気合)。     防御側は下げた足を元に戻すと同時に、ヘチョ・マッキ(十字払い)で構える(気合)。 要  点 1,攻撃側要点 @「足技連打段差攻撃」を修得する。 「足技連打段差攻撃」とは、自由組手における連続蹴り攻撃のパタ−ン、  すなわち正面攻撃の「直線系の蹴り(アッチャギ、ヨッチャギ、ヨッチャ・トゥルキなど)」から 横攻撃の「回し系の蹴り(トルリョチャギ、変則トルリョ・チャギ、コロチャギなど)」を蹴ったり、 横攻撃の「回転系の蹴り(トラ・ヨッチャギ、パンデ・トルリョ・チャギなど)」から 縦攻撃の「縦下ろし系の蹴り(ネリョチャギ、アヌロ・ネリョチャギ、パクロ・ネリョチャギなど)」 を蹴るという異種系統の蹴りを複合した段差連続蹴り攻撃のコンビネ−ションをいう。 A難易度の高い蹴り技を修得する。とくに軸足を横に移動させて「回転系の蹴り」を蹴る方法を学ぶ。  その効果は正確な蹴りの修得を可能とし、中級者の腰の負担を軽減することにある。 a)ヨッチャ・トゥルキ(横前蹴り、7番)  b)トラ・ヨッチャギ(後ろ横蹴り、7番)  c)パンデ・コロチャギ(後ろ掛け蹴り、8番)  d)軸足横移動トラ・ヨッチャ・トゥルキ(後ろ横前蹴り、9番)  e)軸足横移動パンデ・トルリョチャギ(後ろ回し蹴り、10番) 2,防御側要点 @「かわし防御」を修得する。それは攻撃側の攻撃に対し、防御側が、前後・左右・横に身体を移動  することで蹴りをかわし、またはその威力を軽減させるという移動防御をいう。 A難易度の高い手技・防御と反撃技を修得する。 a)移動アンヌン・ソギ+右ソンカル・マッキ+チルギ(6番)  b)移動ニウンチャ・ソギ+流し受け+半屈伸上下運動・右ソンカル・テリギ(7番)  c)サン・パルモッ・モンチョ・マッキ(双手縦受け、8番)  d)移動ティッパル・ソギ(奥足立ち)+パルモッ・テビ・マッキ(双手正面受け)、   踏み込んでキョチャ・ソギ(交差立ち)+トゥン・チュモッ・アッテリギ(裏拳添え打ち、8番)。  e)サン・パルパダッ・ネリョ・マッキ(双手掌底受け、9番)  f)移動半回転トラ・ヨッチャギ(10番) 5、上級蹴美 約束組手 目 的−「初級基本約束組手」と「中級応用約束組手」で学んだテコンド−動作を基礎とする     華麗で美しい蹴り技(蹴美)の約束組手を修得する。     自由組手の技術を高めるため、攻撃側の急所や間合いをはかる動作や     それに伴う防御側の受けの準備動作は行わない。     その準備動作が無くても、攻撃側は適切な攻撃の間合いを瞬時に判断して攻撃し、     他方、防御側はそれに対する適切な防御の間合いを瞬時に判断して防御する技術を養う。    対 象 者−上級レベルの2級(茶帯)と1級(茶帯) 動作基本−上級蹴美約束組手1番〜10番     攻撃側、防御側のいずれも立ち方は、組手立ち。     攻撃側は、あらかじめ定められた手技・足技で攻撃する。進行方向は前進。     防御側は、それを定められた防御で受け(含むかわし防御)華麗で美しい蹴り技で反撃する。     防御側の進行方向は一定しない。 準備動作−急所や間合いは一切はからない。攻撃側と防御側は、ナラニ・ソギで向かい合う。      両者は、同時に右足を引き、組手立ちに構える(両者気合)      攻撃側は、適切な間合いを瞬時に判断する。      自己の攻撃が防御側に届かないと判断した場合、間合いをつめる。その逆の場合(たとえ      ば、足が長いため蹴りを蹴った際、膝が伸びきらないなど)間合いを離す。      いずれの場合でも、防御側は一切動かない。 要  点 1,履修技術の自由組手への応用  「初級基本約束組手」や「中級応用約束組手」などで履修したテコンド−動作は、自由組手の際、修 正応用されるという認識を確認する(とくに自由組手未経験者)。たとえば、「初級基本約束組手・手 技3番」で学んだ上段チルギは、右手を突けば左手を帯の左横に引いたが、現実の自由組手ではそうは ならない。突いた手が右手であれば、左手は脇をしめて顔の左側をガ−ドし、相手の反撃に備えなけれ ばならない。 同様に、チルギの際、肘を伸ばしきることを学んだが、現実の自由組手では、ボクシン グの影響により、肘を伸ばしきらないジャブを突くことがある。 しかし、だからといって矛盾を感じる必要はない。「初級基本約束組手」や「中級応用約束組手」な どで履修したテコンド−動作は基礎であり、基礎的技術が備わってこそはじめて競技技術を高めるため の修正応用作業が意味をなす。いかなる競技も「崩すための(修正応用する)基礎的技術」が不可欠で あるが、だからといってそれだけを「金科玉条可」し、反復練習しても競技力向上は望めない。 初段 への昇段を意識する上級者は、かつて学んだ「基礎も大切、その上でその修正応用も大切」というバラ ンス感覚を涵養してもらいたい。 2,難易度の高い足技・防御と跳び蹴りを修得する。 a)パルパダッ・ヌルロ・マッキ  b)パルパダッ・アヌロ・マッキ、ティオ・パルパダッ・アヌロ・マッキ  c)パルパダッ・パクロ・マッキ、 ティオ・パルパダッ・パクロ・マッキ   d)ティオ・アッチャギ、ティオ・ヨンソッ・アッチャギ  e)ティオ・ヨッチャギ  f)ティオ・トルリョチャギ、ティオ・ヨンソッ・トルリョチャギ g)ティオ・ネリョチャギ h)ティオ・トラ・ヨッチャギ i)ティオ・パンデ・トルリョチャギ V、昇級昇段(初段)審査課題・約束組手  有級者審査課題・約束組手 現 級 初級基本約束組手 中級応用約束組手 上級蹴美約束組手 蹴美創作約束組手 (帯色)  無級 初級基本 (白帯)   1番〜5番 7級 初級基本 (黄帯)   6番〜10番 初級基本の復習 6級 1番〜10番中 (橙帯) 5種類を指定 5級 (緑帯) 中級応用 1番〜5番 4級 中級応用 (紫帯) 6番〜10番 中級応用の復習 3級 1番〜10番 (青帯) 5種類を指定 2級 上級蹴美 受験者が5種類創作 (茶帯)   1番〜5番 「昇段審査課題・ 昇段審査受験者  蹴美創作約束組手」  1番〜10番  を参照すること 上級蹴美 1級 昇段審査受験者 同上 (茶帯)  6番〜10番 W、昇段審査課題・蹴美創作約束組手    昇 段 審 査 課 題  現級段 蹴 美 創 作 約 束 組 手 種 類  1〜2級 攻撃側のチルギもしくはチャギの単発攻撃に対する   (茶帯) 防御側の手技・足技によるマッキおよび反撃の 5種類 蹴美創作約束組手を創作。 創作 *初段昇段課題 受験者は、指導者の指導にもとづき創作すること。 初 段 攻撃側のチルギもしくはチャギの連続攻撃に対する (黒帯金線1本) 防御側の手技・足技によるマッキおよび反撃の 5種類 蹴美創作約束組手を創作。 以上 *弐段昇段課題 受験者は、指導者の指導にもとづき創作すること。  創作 弐 段 攻撃側のチルギもしくはチャギの3連続攻撃に対する (黒帯金線2本) 防御側の手技・足技によるマッキおよび反撃の 5種類 蹴美創作約束組手を創作。 以上 *参段昇段課題 受験者は、独自創作すること。  創作 参 段 攻撃側の複数の相手(2名以上)のチルギもしくは (黒帯金線3本) チャギの連続攻撃に対する 防御側の手技・足技による 5種類 マッキおよび反撃の蹴美創作約束組手を創作。 創作 *四段昇段課題 受験者は、独自創作すること。