2006年1月 理事会通信


(公開可能議題) JTA昇級昇段審査課題の改訂

<提出者 河明生>

                      一、改定案

 2006年6月からの第76回審査会より(一部は3月の第75回審査会より)下記の通り改訂したい。

  1、2級・赤帯の新設
    なお、特別昇級を続ければ、従来通り、4回の昇級審査受験で昇段審査受験資格(1級)を有する。

  2、上記1にともない昇段審査受験資格者は、1級・茶帯のみとする。

   暫定処置として
   @既存の茶帯・2級は、2007年6月までの期間に昇段審査を受験した場合に限り、
    旧昇段審査課題で昇段審査を受験できる。

    この期間内に既存の2級・茶帯会員が昇段審査を受験しない場合、新制度のとおりとする。
    JTAは、当該会員に対し、赤帯を貸与(無料)する。

   A第75回昇級審査会に限り、従来認められていなかった「昇級審査複数受験」を認める。
     たとえば、現在5級・緑帯の会員が、
     3月21日の第75回昇級審査(神奈川横浜会場)を受験して3級・青帯に合格した場合、
     旧制度の昇段審査を受験するため茶帯昇級を目指し、
     5月20日の第75回昇級審査受験(東京城東会場)を認める。
     当該会員が茶帯に合格した場合、上記@の受験資格を有するものとする。


  3、上記1と2にともない昇段審査課題と昇級審査課題を一部改訂する。

   @これによって、一般昇段審査課題が若干減り、社会人会員への配慮が可能となる。
    
   A 逆に、少年少女部会員の昇段審査課題と昇級審査課題は、若干増やす。
     これによって、一般部と少年少女部との段位・級位の「格差」を意識しなくなる。

     なお、少年少女部の昇段審査の改訂は、第75回昇段級審査(神奈川横浜会場)より実施する。
     下記、昇段審査の「分割受験」を認める。
      
     これは旧制度下での審査であり、
     昇段課題が、従来に比べてほぼ倍増したことから、
     少年少女部受験者に改訂にともなう過度な負担を強いないため
     すでに修得し、受験する型および約束組手の組合わせは、担当支部長に一任する。
     担当支部長は、事前に昇段審査官に受験する型および約束組手の組合わせを報告すること。


  4,昇段審査の「分割受験」を認める。受験料は変更無し。
    第75回昇段級審査(神奈川横浜会場)より実施する。

    1)昇段審査受験者は、あらかじめ「JTA昇段審査受験申請用紙」に
      「1回受験」、「2回受験」、「3回受験」の別を明記する。

    2)「分割受験」は、一次試験(型)、二次試験(約束組手、試し割り)、三次試験(論文)とする。

    3)「分割受験」は、1年以内に連続して受験しなければならない。

    4)「分割受験」を選択した受験者が、及第点に達しない場合、
      従来通り、及第点に達するまで再受験しなければならない。

    例)「1回受験」を選択した受験者
      従来通り、1回の試験で合格できる。
      ただし、及第点に達しなければ、従来通り、合格するまで再受験となる。
    
    例)「2回受験」を選択した受験者(下記の2パターンに限る)
      ただし、及第点に達しなければ、従来通り、合格するまで再受験となる。

      <パターン1>
           3月21日受験        一次試験(型)+三次試験(論文)提出
          7月東京都大会時(予定)受験  二次試験(約束組手、試し割り)

      <パターン2>
           3月21日受験        一次試験(型)+二次試験(約束組手、試し割り)
          7月東京都大会時(予定)受験  三次試験(論文)提出

    例)「3回受験」を選択した受験者(下記のパターンに限る)
      ただし、及第点に達しなければ、従来通り、合格するまで再受験となる。

      3月21日受験            一次試験(型)受験
      7月東京都大会時(予定)受験     二次試験(約束組手、試し割り)
      12月23日(予定)受験 三次試験(論文)提出


  5,旧制度では、白帯の特別昇級を認めていなかったが、
    他流派のITFやWTFの上級者(4級以上)に限り、白帯からの特別昇級を認める。
    該当者は、他流派の級位を証明できる帯もしくは級証を審査官か審査官の代理人に提示すること。
    第75回昇段級審査(神奈川横浜会場)より実施する。


            二、改訂の理由

(理由1)従来の審査制度下において、1級(茶)は制度的には存在しているが、
     現実には2級(茶)で昇段審査受験を認めていることから、過去1級は1名も存在していない。
     制度が形骸化しているといえる。
     形骸化している制度は、つねに見直す必要性がある。

     同様に、3級から1級への特進を制度的には認めてはいるが、
     過去の受験者(青帯3級)のすべてが、通常昇級(1級昇級による茶帯)を選択してきた。
     そのためか「茶帯受験時の積極性が、過去の受験時と比べて落ちている」
     と武田、盛島両審査官が理事会で指摘していた。


(理由2)現在、長期化していた不況による雇用不安を通じて、
     定職があるなしにかかわらず、また勤め先の大小、有名無名にかかわらず、
     社会人がいわゆるサービス残業や業務が終了しているにも拘わらずなかなか帰りにくい等の
     過度な労働を強いられており、
     その結果として、
     実りある豊かな人生に不可欠な「私的な時間」を削られている状況下にある、と言わざるを得ない。
     そのためか、JTA社会人会員の不規則な稽古参加状況がみられ、
     茶帯に昇級し、黒帯まであと一歩と迫っており、
     当該会員も昇段を希望しているにも拘わらず
     上記により稽古への不規則な参加のためか昇段課題が思うように修得できない、
     という悪循環がないとはいえない。

     一部の打撃系武道では、昇段を控えた茶帯(または赤帯)になると、
     高額な参加費を徴収する合宿や有料セミナー等に複数回参加しないと昇段審査を受けられないとか、
     とくに問題があるわけではないのに、道場の先生のお気に入りにならないと昇段審査が受験できない     等の悪弊がある。

     JTAは、創立以来、上記のようなことは一切行っていないし、今後も行う予定はない。

     JTAテコンドーを生涯の道とする有段者が輩出されることを望んではいるが、
     人にはそれぞれ個性があり、その数だけ人生観があり、それにもとづいたテコンドー観もあろう。
     体力差や運動能力の差もあり、また本業・仕事や家庭の事情等もあろう。

     JTAの普及するテコンドーが教育だというのなら、
     各種学校に卒業があり、卒業証書が手渡されるように、
     昇段を卒業試験と位置づけ、「武道家卒業生」を世に送り出して行かなければならないと考える。

     各自が数ある武道の中からJTAテコンドーを選択し、
     直面する様々な問題を克服して練習に参加し、
     所属道場内での理想的な人間関係を構築した結果として、茶帯まで取得していながら
     昇段しないまま道場を人知れず去ってゆく顛末は、ただただ残念というほかない。

     なぜならば、学校を中退した人が、同窓会に顔を出しにくいのと同じように、
     長年かけて築き上げた俗世間とは異なるピュアな所属道場内での人間関係が無くなり、
     比喩的な例えで言うのなら、精魂込めて自分で育てた有機野菜を調理しないで捨てることに等しい、
     と思うからだ。世俗的な言葉で言うのなら、もったいない、につきる。

     やはり仮に道衣を脱ぐことになったとしても、
     卒業生として出身道場のイベントに参加できる方が望ましいはずだ。
     通常のビジネスの世界は、金の切れ目は縁の切れ目と言われるが、
     武道はそういう世界ではない。
     世俗的な価値観でははかれない人間関係が構築できるのであり、それは一生の宝になる、
     と、私は考えている。

     日本人は、働き過ぎのような気がしてならないが、
     社会人が仕事と時間に追われるという環境は、改善されないだろう。  
     とすれば、JTAが社会人の茶帯に配慮すべく、改善して行かなければならない。
     具体的には、昇段審査における「分割受験」を認め、審査課題も若干減らすことで、
     社会人会員が昇段審査を受験しやすい環境を整えるべきだと考える。


(理由3)同様に、少年少女達の環境も、好むと好まざるとに拘わらず、より一層競争化現象の渦中にある。
     こういう状況下で、保護者の方が、数ある武道の中からJTAテコンドーを選択し、
     大切な子女をJTA道場に通わせてくれていることに対し、感謝を念を禁じ得ない。
     とりわけ、茶帯まで上りつめた少年少女部会員および保護者については一層その傾向が強い。

     やはり始めた以上は、結果をだすという観点から昇段し、自信を育むことが望ましい。
     従来の少年少女部昇段制度の問題点は、社会人とは逆に、少々簡易すぎた点にある。

     もともとJTAは、学生や社会人中心で、少年少女部が増加したのは最近のことであった。
     ところが、東京江東支部や品川浜川支部等の少年少女部が育ち、
     昇段審査間近の喜ばしい状況におかれるや、
     一部の保護者から「少年少女部の昇段審査が易しすぎるのではないか?」という意見をいただいた、
     と担当支部長から陳情があった。

     昇段審査の難易度を多少高めたほうが、
     少年少女部会員が自信を育むという点では望ましい、と考えられるので、改訂したい。

(理由4)JTA創立当初より、他流派のITFやWTFからの転向者が存在したが、
     昨年よりそれが目立つようになってきている。
     その中には、上級者もおり、彼らの純粋性やまじめな姿勢は感じいるものがある。
     団体ではなく個人の転向により、既存の級位を追認するというのは現時点では難しいが、
     彼らのプライドは尊重すべきであろうと考える。
     そこで他流派テコンドーの上級者に限り、白帯からの特別昇級を認めたい。

<結果> 満場一致で可決。