滋賀県彦根市講演のお知らせ


講演題名   「育児と人権教育」

講師      河 明生
         (日本テコンドー協会会長、法政大学経営学部・同大学院・兼任講師、経済学博士)

日時     2004年1月17日(土曜日) 午前10時30分開始

場所     多景保育園
        滋賀県彦根市須越町1154ー5  0749−28−0681
        JR琵琶湖線、彦根駅(南彦根駅)下車、湖国バスで「須越北」下車
        駐車場完備。 
 
参加費    無料 

主催     社会福祉法人 彦根福祉会

問い合わせ先  0749−28−0681 


内容要旨   

小説『龍馬がゆく』で坂本龍馬を英雄にした作家、司馬遼太郎(『風塵抄』中央公論社)は、
ヨーロッパにある日系ホテルの日本人支配人からおおむねつぎのような話を聞いた。

ー 私達は20年ヨーロッパに住んでいるが、家族を含め人種差別を感じたことがない。
  もしかすると内心では、私達のことを黄色人種と思っているかも知れない。
  ヨーロッパはレイシズム(人種差別主義)の本家だからだ。
  しかし、今は片鱗も見せない。

  教育のおかげというほかない。
  たとえば、オランダでは小学校に入ると徹底的に差別否定教育をやるんです ー 

司馬は「ヨーロッパは、いまも文明の先頭にいる、と悔しいがそう思った」という。
つまり司馬は、日本には民族差別などがあるのに差別教育に関心が低い。経済的には先
進国にはなったが、いまも文明の先頭にはいない、ということを悔しがったといえるのではないか。

他方、丸山真男(元東大教授)は、日本・日本人には「抑圧移譲の原理」があると指摘した。
それはひらたくいえば、普段、「上位」の人々から差別され、「抑圧」されている人間が、
自分よりも「下位」の相手をみつけだし、
自分が「上位」の人々から受けているはずの差別や「抑圧」を
「下位」の人々に移譲したがる、という卑屈な心理のことだ。
日本人は、そうすることで「安心」するらしい。

差別がなくならないのは、差別されている人々が差別を再生産するからなのかも知れない。

両者はいずれも故人であり、彼らが感じ、分析したかつての日本・日本人と現代の日本
・日本人とが同じだとは言い難い。

だが、どうも完全には否定できないようにも思える。
たとえば、2003年5月、福岡市西区の小学校の教員が、家庭訪問先の教え子(4年生)
の曾祖父が米国人であると知り人種差別をあらわにした。「外国人の血が入って汚らわしい」と発言し、
その児童に対し「汚れた血をうらめ」「生きている価値がない」
「自分で死ね」などと暴言をはきながら暴行したという(朝日新聞、2003、10、16)。

さてみなさんは、自分の体験に照らしてどう思いますか?

仮に現代日本に差別が存在し、「抑圧移譲の原理」があるとするならば、果たして「日
本は良い国だ」と胸をはっていえるのであろうか。おそらくそれは、その人の親に当た
る世代から受けた有形無形の国家的、社会的、家庭的な「教育」環境によるものである。
だとするならば、国家的、社会的、家庭的教育を通じてそれを改善することもできるはずだ、と考える。

私は、日本に残存する差別をなくすことは、日本のためになる、と確信している。

精神的に豊かな人々は他人を差別する必要性がない。
二児の父親である私にできることは、家庭的教育を通じて我が子の人格を正すことである。
子どもたちが、長じて、いかなる人も差別しない優れた人格、精神的豊かさを有してい
ることを期待する。将来、彼らが選んだ生涯の伴侶が何人であれ、私は心から祝福した
いと思っている。これが河家の育児方針である。
                                   河明生